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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第10章 山田二郎

良夫は、上機嫌で車に乗ったが、そもそも山田二郎のことはよく知らない。

プラモデルは本当にいま欲しいものだったため、プレゼントとして素直に受け取ったが、よく 知らない相手からもらうのもどうかと思い、二郎を知ろうといくつか話を振ってみた。

「て、言うか、その格闘家のあんたが、なんでこんな冴えない会社員に相談持ちかけんの?
失礼やけど、僕は野球しか見ないからあんまり格闘技はよう知らんのやわ 」

二郎はチラリと良夫を見ると、シートの横に置いていた黒い狐のお面を手に取った。

「同じ匂いを感じたんですよ」

「いや、会社に置いてあるボディーソープの匂いやで。てか、聞いて、普通ボディーソープあったら、シャンプーもコンディショナーも置くやん。ボディーソープだけやで。会社で風呂入ったら、頭もボディーソープで洗わないかんねん、どない思う?」

「あ、いや、その匂いじゃなく……」

大阪のおっちゃんの勢いには、関東の格闘家も思わずしり込みしてしまう。

「あの、田中さん、今朝お会いした時、お面は呪いだって言ってましたが、あの意味がよくわからなくて……」

「お面なぁ~」

良夫は、「ごめんなぁ~」をお面を使った駄洒落で言ったのだが、通用しなかった。返事一つない二郎に、息を整えてから、ちゃんと説明することにした。

「いや、あのお面はさぁ、本当に急にピタッと貼り付いてくるんよね」

「はりつく?」

「そう、貼り付いたらしばらく取れんのよ。そしたら、なんか訳のわからんことに巻き込まれたり、えらい災難やで」

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