お面ウォーカー(大人ノベル版)
第1章 誕生
「嘘やろ……てか、桜もまだつぼみやし、今年は異常すぎるわ」
良夫は、寒さにはめっぽう弱く、冬場には他人が二度見するほどの厚着で外に出る。
今日は水曜日。動きたくはないが、このままでは仕事に遅れてしまう。
気合いを入れてこたつから這い出ると、人が発するとは思えないような声を出して、柱につけたフックにかかった黒いダウンジャケットを引っ張り下ろす。
ラジオの気象予報士も、異常気象だとしか言いようがないらしく、先の見通しが立たないとサジを投げるような発言を繰り返す。
良夫は、急いで防寒準備をすませる。耳当て、マフラー、手袋、カイロは必需品だ。
さて行こうかと、ふと炊事場横の玄関に目を向けると、壁に立てかけてある白い紙製の手提げ袋に気が付いた。
「あ、あれって」
それは、前日の昼休み。工場の敷地内にある自動販売機で、缶コーヒーを買っている時に、10歳若い後輩から、旅行の土産として貰ったものだ。
旅行とは、有給休暇を使っての新婚旅行だ。それだけでも気に入らないのに、そのお土産となると、不愉快極まりない。
しかも、その後輩は、製造部一課課長だ。
良夫のことを、「田中くん」とくん付けで呼ぶ。
入社間もないころは、よく飲みに連れて行ってやったものだが、わずか数年でいとも簡単に追い抜いていくとは……。
手提げ袋の中は、お菓子等ではなく、なにやら皿のようなモノが新聞紙に包まれている。
「いらんし……」
良夫は、寒さにはめっぽう弱く、冬場には他人が二度見するほどの厚着で外に出る。
今日は水曜日。動きたくはないが、このままでは仕事に遅れてしまう。
気合いを入れてこたつから這い出ると、人が発するとは思えないような声を出して、柱につけたフックにかかった黒いダウンジャケットを引っ張り下ろす。
ラジオの気象予報士も、異常気象だとしか言いようがないらしく、先の見通しが立たないとサジを投げるような発言を繰り返す。
良夫は、急いで防寒準備をすませる。耳当て、マフラー、手袋、カイロは必需品だ。
さて行こうかと、ふと炊事場横の玄関に目を向けると、壁に立てかけてある白い紙製の手提げ袋に気が付いた。
「あ、あれって」
それは、前日の昼休み。工場の敷地内にある自動販売機で、缶コーヒーを買っている時に、10歳若い後輩から、旅行の土産として貰ったものだ。
旅行とは、有給休暇を使っての新婚旅行だ。それだけでも気に入らないのに、そのお土産となると、不愉快極まりない。
しかも、その後輩は、製造部一課課長だ。
良夫のことを、「田中くん」とくん付けで呼ぶ。
入社間もないころは、よく飲みに連れて行ってやったものだが、わずか数年でいとも簡単に追い抜いていくとは……。
手提げ袋の中は、お菓子等ではなく、なにやら皿のようなモノが新聞紙に包まれている。
「いらんし……」