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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

良夫は、それどころではない。

「ちょ、逃げないとやばいって! 昭玄……じゃなかった、田中さん!」と男は、良夫に呼びかけるか、何度も言うがそれどころではない。

良夫は、しょうげんて誰だと思いつつも、お面を外すことで必死だった。

『グアアアアッ!』

ドラゴンは、天を仰ぐように哮り立つ。窓を吹き飛ばさんくらいの勢いで、背中の翼を大きく広げる。

すると男が突然、

「パルプンテ!!」

「それだっ!」と夢の話を語る良夫が、突然立ち上がった。

長谷川は、正面で体をビクつかせる。

「なんやねんないきなり……アルデンテってなんや? パスタでも茹でてんやのか?」

「違う違う、こっちの話や。その若い男が、それを叫んだんや」

良夫は心の中で、ガッツポーズをきめた。夢の中で、その呪文を唱えた時、お面が外れたのだ。これを唱えれば、お面の呪いに悩まされることがなくなる。

「だからって、いきなり立ち上がることないやろ。ビックリするわ」

「悪かった。さぁ、パスタ食ってくれ」

「これは、おでんの糸こんや。で、ドラゴンが出て来てどうなってん」

「俺が屁をこいたら、窓から匂いが漏れてドラゴンが屁の匂いで倒れたんや。で、一件落着して、バニーガールの姿のまま会社に行ったところで目が覚めたんや」

「なんやねんなその話、田中さんが作った話ちゃうん?」

「見た夢やがな。ほんま、アパートの裏にドラゴンがおったんや。リアルやったわぁ。おばちゃん、瓶ビール頂戴」

しばらくすると、テーブルに、ビールとスパゲティが運ばれた。

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