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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

良夫は、半ばヤケクソになりながらも、気持ちを落ち着かせて、その場にとどまった。

しばらくすれば、お面は外れる。

そう思った。今までも、顔に貼り付いてから、10分15分くらいで外れている。

落ち着いて、その時を待て。

「そう、心を無にし、時が来るのを待て。おのずと外れてくれるであろう」


30分経過。

外れることなく、顔のお面を隠しながら早歩きをする良夫の姿がそこにあった。

「なんで? いつもより時間かかってない?」

あのまま立ち止まっていると、足が冷えおしっこがしたくなる。こんな寒い日に、生チンを放り出して塩分のあるぬる湯を放出するのは、生き地獄である。

病院も開いていないだろうし、救急に電話するのも気がひける。

こうなりゃ、家まで向かって、ジッとしておこう。

翌朝になっても外れていなければ、病院にいけばいい。

「とにかくひと気の無い道を通るか……」

良夫は細い道を選んで、歩いて行こうと考えた。

街灯の少ない、住宅街の裏道。

お面をつけた男は、周りを気にしながらゆっくりと進む。

「右良し左良し、ゴーッ……あ、警察だ」

見回りのパトカーが、横切っていった。うまく身を潜めたため、気付かれずにすんだ。

「セーフやね、こんな姿、間違いなく不審者ですぐに事情聴取受けるわ」

ただ、お面をつけてるだけで止められるのはゴメンだ。

良夫は、パトカーが、見えなくなるのを待って先に進んだ。

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