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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

良夫には、ある心配があった。

これが、もし取れなかったらどうしようか……と心に不安が積もる。

「ずっとこのままだと、いい笑いもんだわ。なんとかせにゃアカンで……」

少し広い道を、小走りで渡る。

そしてまた、細い道へ。

その道に入る手前に、飲食店案内の看板があった。

それは、パスタやピサを提供するお店だった。

良夫は、ふと、その看板に目を向けた。

「んっ!」

何かを思い出した。まず、頭に浮かんだのは、居酒屋での話だった。

「パスタ……アルデンテ……あぁっ!!」

良夫は声を上げ、両手をお面に当てた。

「あの呪文、効くかもしれない」

良夫は壁に体を向け、心を落ち着かせて、ある呪文言った。

「イヨマンテ」

…………
…………
…………
なにも起こらない。

「違ったか? なんだっけ、タレパンダ、わらばんし、イカリング、エレガント、アカン、よけいにわからなくなった。落ちつけ俺」

普段はそれほど、もの忘れは酷くない方だと思っていた。夢で聞いたあの呪文を、いい大人が信じているといったことも、恥ずかしいとは思わなかった。

夢で見た数字が、宝くじの番号と一致して一攫千金を物にした話もあるからだ。

「なんだっけかなぁぁ……」

見た夢を、初めから思い出そうとする。

「俺はなぜか裸で、部屋にはなにもなく、くそ寒い中、意味なく玄関で……」

そのキーワードが出るまで、しばらくかかった。少し苛つきもあったが、とにかくお面を刺激しないように、気持ちを抑えながら夢を思い出す。

やがてその時が、訪れた。

「パルプンテ!!」

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