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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

呪文を唱えてはみたものの、お面は1ミリも動かない。

半ば、だろうなとは思ってはいたが、大きく期待していた分、落胆はかなりのものだった。

「まあな、夢のことだ。そんなうまいこといくかいな」と笑いながら、お面の奥に見える目には、涙が浮かんでいた。

「なんやねん、パルプンテて……呪いの方が強いやないかい!」

「何回モ呼んデ、なンか用か!」

どこからか、妙な訛りの声がした。

「え……誰?」

良夫は、顔を隠すように振り返る。

少し離れた街灯の下に、薄い光に照らされた人物が見えた。

ハッキリとは見えないが、裾が長い黒色のコートを着た男のように見える。

男は、「あンたが、呼んダ?」と人差し指を立てて、近付いてくる。

良夫は面倒くさいことになったと、俯いてシラをきることにした。

「あんタね?」

背後に、男が来た。

こうなったら……と良夫は振り返る。

男はお面の顔を見て、軽く驚いた。それと同時に良夫も驚いた。

なぜなら、その男の顔が、夢で見た、やくみつるに蹴り入れたような顔にソックリだったからだ。

男は、詰め寄る。

「ナぜ、俺の名前、知っテる?」

「はぁ?」

そう聞かれても、初対面で名前も知らない相手であり、人の名前も呼んだ覚えがない。

男は、良夫の服を掴み、「ちょっト来イ」とさらに街灯の当たらない位置まで、引き込む。

「わ、わ、ちょっと乱暴はやめて……」

「オ前誰だ、そノ顔はなンだ」

「あ、あ、いや、ごめんなさい、これは……」

「なゼ、名前を知っテる?」

男は、そう言って小型ナイフを突きつけた。

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