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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

何かが走ってくるような音がした。すると良夫は、更なる危険を感じ、男の手を振りほどいて、背後に隠れた。

厚めの防寒着で身を包む良夫は、かなり着ぶくれしており、男の後ろに隠れるには無理があった。そのため、男が着ているコートを左右に引っ張る。

「ちょっト、待てオい!」

男は、良夫の突然な動きに、やや狼狽える。

「いたぞっ!」という声と共に、ライトが照らされる。

「ナにっ!?」

男の顔が強張る。振り返って逃げようとするも、後ろにいる良夫が、なぜかコートをしっかり握っており、身動きが取れない。

良夫は警察に見付かるまいと、必死に男の背後に中腰で隠れるが、これは走って逃げた方が早いと、そのまま後退りしながら、ゆっくりと離れていく。

「オい!」と男は振り返り、良夫を捉えようとするが、中腰で見上げた状態の良夫は咄嗟に両手を上げて抵抗する。その拍子に、良夫は後ろに倒れてしまう。

男は長いコートの裾に膝をとられ、バランスを崩すと、良夫に覆い被さるように前方に倒れる。

「うわぁっ!」と良夫は左足を上げて、男を支えようとするが、飛び越えるようなかたちで倒れる男の胸元を、その足で蹴り上げる状態となった。

男は柔道の巴投げのように、前方に、一回転して投げられた。

「んンぉォーッ!!」

叫びながら倒れる男のコートが、大きくはだける。

なにが起こったか理解出来ない良夫は、慌ててスクッと起き上がる。

「えっ?」

コートの下の姿は、なぜかバニーガールの姿だった。

「え、これって……」

男の姿は、顔も衣装も、すべて夢で見た男……いや、自分と一致した。

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