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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第5章 その顔で歩く

警察官が二人、倒れた男に駆け寄り、取り抑える。

「通報があった。婦女暴行、窃盗と銃刀法違反の容疑で逮捕する」

見ると、男の周りには、数枚の女性の下着が錯乱していた。盗んで隠し持っていた物が、投げられた拍子に、散らばったのだろう。

男は女性の下着等の着衣を好む癖があり、洗濯済みで干しているものではなく、実際に身につけたものや、まだ洗っていない物を狙っており、一人暮らしの女性宅に忍び込んでは、ナイフを突きつけて脅し、金を奪うより、いま着ている衣類を要求し、強姦して逃げ去るといったことを何度も繰り返していた。

良夫は、呆然と立ち尽くす。そこに、一人の警察官が近寄る。

慌てて、良夫は顔を隠そうとするが、なぜかお面はなかった。

「ご協力、ありがとうございます」と警察官に言われ、良夫は、わけもわからなく「はぁ……」と答える。

良夫は道の隅に転がっているお面に気付くと、警察官からの調書に答えながら、そのお面を拾い上げた。

警察官が、「それは?」と聞くと、良夫はシラをきるつもりで、『さあ、これもあの男が持ってきたものじゃないっすか?』と答えようとした。

「さあ、これも……」と言いかけると、もう一人の警察官が、「そのお面は、そちらの男性の持ち物だそうです」と言った。

窃盗の男が「お面野郎」と良夫のことを言ったようだ。

「あ、はい、これは会社の同僚に貰ったお面です」と良夫は素直に答えた。


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