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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第1章 誕生

「なにこれ? まさか、あいつ呪いの肉付き面かなにかを持ってきたんとちゃうやろな」

お面の凹みにピッタリとハマってしまったのではないかと、急いで炊事場の流し台にある食器洗い洗剤を手に少量つけ、よく泡立てる。

その泡を、お面と皮膚の間に塗布する。
抜けなくなった指輪を抜く時に、よく用いられる方法だ。

「うん、こうやって馴染ませれば、すんなりとお面が……はずれないときたもんだ。おいっ!!」

少しもズレることもなく、しっかりとくっついている。

壁にかけてある鏡を見る。

目の前には、お面をつけた40代のおじさんがいた。

「洒落にならんぞ。俺はこれから仕事に行かなきゃならんのに……」

無理に引っ張ってはみるが、皮膚がめくれそうになるくらいに痛くなる。

この時、甲羅を剥がされる蟹の気持ちが、よくわかった。

「アカンぞ……これはアカン」

テープや接着剤のようなものは、なにもついていないはずだ。だとしたら、お面が顔にしっかりとハマっているとしか、言いようがないのだが、どうやらそうでもないらしい。お面と同化しているような感じだ。

気が付けば、手にはカッターナイフが……。無意識にカッターの刃を、お面と肌の隙間から入れこんで、無理矢理に剥がそうとしていた。

「アカンアカン! 顔にお面の縁通りの、傷がつく……これって、病院に行くしかないかな……」と言って時計を見る。

病院に行こうにも、まだ開いてる時間ではない。

「うん、それなら病院開くまでまだ寝れるか……いや、寝られへんわ。でも、このままやったら……救急車でも呼ぶか?」

お面が取れないだけという理由で、救急車を呼ぶやつはいないだろう。

さすがに、それは違う意味の痛いやつだ。



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