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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第1章 誕生

貼り付いて取れないという焦りとイライラが、冷静な判断を鈍らせる。

同時に、こんなお面を土産に買ってきた後輩に、怒りを覚えた。いや、随分前から自分を追い抜いて出世して、結婚までした後輩に対して嫉妬と恨みが積もりまくっているところに、こういった仕打ちをぶつけてきたことで、新たに殺意までも覚えた。

「落ち着け……落ち着け……必ず取れるはず」

良夫は、再び時計を見る。

「七時半か……」

普段の良夫は、朝七時に起き、駅前のコンビニか喫茶店のモーニングで朝食をとったあと、電車で二駅移動し、八時半までに職場に向かう。

「朝食は無理だな……」と項垂れながら、解決策を考える。

お面の中央を破壊して、顔だけでも出そうかと、こたつの上にあるプラモデルを組むために使うニッパーとカッターナイフを手にしたが、いくらお面をしていても、刃物を顔に向けるのは怖い。

「もういい、とりあえず病院に行こう。職場にはあとから電話しよう」

カッターナイフとニッパーをこたつの上に置き、顔を隠すようにマフラーを巻いた。さらに、深くニット帽を被り、サングラスをかける。お面に耳があるため、なんとかかけることが出来た。

「なるべく、人に会わないようにしないとな」

玄関ドアを開けると、二階の奥に住む老人男性が杖をつきながら廊下を歩いている。

良夫が住んでいるのは、築50年の2Kの風呂無しアパートで、住人のほとんどが独り身の者かお年寄りばかりだ。

良夫はすぐにドアを閉め、ドアスコープ越しに男性が通り過ぎるのを待った。

「足腰悪いのに、なんで二階に住んでんだ?」

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