テキストサイズ

お面ウォーカー(大人ノベル版)

第6章 ヒーローがいるなら、これもいる。

漠間の発案に、三島くんはガンと頭を殴られたような衝撃を受けた。

「さ、さすがです博士っ! それは、気がつきませんでした。私のような低脳な助手が、博士に対してとんでもないことを……」

「いや、いいんじゃよ、三島くん。たまには部下の発言にも耳を傾けなくてはならない。そうでなければ、漠間発明研究所、略して漠発所(ばくはつしょ)は上には進めん」

「博士……」

三島くんの目に、涙が浮かぶ。

『ドンドンドン』

突然、ドアを叩く音が聞こえる。

「三島くん、お客様だ」

「はい」と三島くんが、扉を開ける。

そこに立っていたのは、ふてぶてしさがキラリと光る、60代の女性だった。

「ちょっと、漠間さん、あんた家賃二ヶ月滞納してんだけど、いつ払うのよ」

その女性は、このアパートの家主だった。

漠間は、静かにトイレに隠れる。

「あ、申し訳ございません。博士の新発明の商品がもうすぐ売れます。そうなりましたら、来年の分までお支払い出来ますので、もうしばらくお待ちいただけないでしょうか?」と三島くんは、低姿勢で応える。

家主は、大きなため息をつき、表情をゆがめる。

「まったく……じゃ、今月払えなかったら、すぐに出ていってもらいますからね」

「大変、申し訳ないです」

三島くんは、静かに扉を閉めた。

「三島くん」とトイレのドアの隙間から、漠間が呼ぶ。

「はい、なんでございましょう」

「こうなったら、押し入れの中に残っている商品を売りに出るか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ