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お面ウォーカー(大人ノベル版)

第1章 誕生

小さなレンズから、ヨタヨタと歩く老人男性が通り過ぎるのを覗う。

「ん?」

老人の姿が見えない。速度を上げたのだろうか?

あのスピードでは、まだその辺りを歩いているだろう

しかし、自分の前でゆっくりと歩いているのなら、後ろから歩いていけば、少なくともお面の顔を見られることはないし、ある意味時間稼ぎにもなる。

「ゆっくり行くか」

良夫はドア開けた。

ドーンという音とともに、ドアノブを握った手に、強い衝撃がかかる。

「うわっ!」と思わず声が出る。

開いたドアの向こうで、何かが倒れた音がする。

「なにっ?」

ドアを閉め、反対側を見ると50代半ばと見られる女性が、青のスウェット姿で仰向けに倒れていた。

「えっ!? ちょ、なに……」

良夫は、女性を起こそうと近寄るが、自分の顔を見られてはまずいと、すぐに足を止めた。

しかも、女性の手には、ハンマーが握られている。変質者と見られて殴られたら終わりだ。

「ごめん」

それだけを言うと、良夫は向きを変え、老人男性の後ろについた。

下りの階段の手前で、老人は足を止め、振り返る。

顔を見られてはなるものかと、良夫も 振り返る。その時、良夫は大切なことを忘れていた。

鍵をかけていない。

慌てて、自分の部屋の前まで移動する。

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