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りさと3人のDoctors

第76章 医者の卵



(死戦期帝王切開…。)


蓮の言葉を聞いてりさはその場で固まった。



蓮は蘇生を続けたまま帝王切開をして胎児を取り上げるという判断をした。

でもそれは、母体の心肺蘇生成功率を高めるために行うもの。胎児の生死は問わないことになる。



お母さんも赤ちゃんも両方助けたい。

そんな思いでいたりさは一瞬にして絶望感に襲われていた。

そんなりさに蓮の怒号が飛ぶ。



「白鳥!!ぼーっとするなら出て行け、邪魔!!」


「え…」



家ではいつも優しいにぃに。

指導医になってからは、もちろんそんなこと関係なく指導してもらってたし、叱られることもあったけど、これほどまでに蓮に怒鳴られて突き放されたのは初めてだった。



救急の現場で何もできない自分。

医者なのに、ただ目の前の患者を見つめるだけで、先輩医師たちの動きを見つめるだけで、何一つできやしない。



気づくと、誰もいなくなった初療室の隅に1人ぽつんと立っていた。





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