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蜃気楼の女

第20章 櫻子の日本国、乗っ取り計画

「あたしという女を知れば、あなたの心は変わるわ、いえ、変えてみせる…… 」
 そう思いながらも、櫻子は尚子に嫉妬した。女王としてアラビアーナ宮殿で同胞を支え尊敬されてきた。彼女が初めて抱く心、嫉妬だった。今までに感じたことのない、負の感情がラービア改め櫻子の心を支配し始めた。櫻子は時間が残り少なくなってきたことを危惧した。
 女が好きな男と好きなとき、セックスをする。その反対、男が好きな女とセックスすることも、日常のことである。初対面であっても、挨拶代わりに、ソファーでくつろぎながら、食事をしながら、キッチンテーブルの上で、本を読んで休憩がてら、「しよ…… 」それだけで、セックスをするのが、蜃気楼の国のマナーだ。そのフリーセックスの国アラビアーナ国と比べると、この二人は特異な関係である。肉体を使わない心だけの妄想セックス。今までに見たことも、聞いたこともないセックスに、櫻子は恐怖した。過去の肉体としてのセックスは、すべて超能力を使った尚子の妄想なのだ。肉体を精神と同化させた新しいセックスが営まれようとしている。こんなセックスが力を付けたら、これから日本を乗っ取ろうとしている櫻子の野望は頓挫する。大きな氷壁が立ちはだかる。なんとしても尚子を仲間に取り込む必要を感じた。
「何? これがセックスというの? ただの妄想じゃない? セックスがこれだけフリーになった世界で、何なの、この二人? いわゆる変態じゃないの? 」
 それも毎日何十年と繰り返してきた妄想のセックス。ど変態極まりない。櫻子はこの変態性が日本中に広まった時を想像し、驚愕した。大げさではない。この新しいセックスが広まれば、大変なことになる。つまり、複数人とのセックスが可能になる。一つの体に複数の性心が同化する。同化したものは、平等に快楽を感じることが可能となる。それも、複数の人間による、複数の快楽を感じる。快楽、官能の無限化が起こる。
「すごいわ、これなら、彼と尚子、あたし、3人で愛し合える? 3人は心で、あたしが二人の肉体と心を虜にするのよ。二人はあたしの並外れた能力を使った心身の官能を知る、そして、あたしの虜になる、フフフ 二人ともまとめてあたしの領域に取り込む。日本の蜃気楼化のビジョンが見えたわ」

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