
蜃気楼の女
第21章 学園
18歳の山野櫻子は、羽田空港に到着すると、直ぐに、安田尚子の通う性心女子高等学園へ向かった。女だけが通う、女の園、まさに、環境は蜃気楼の国・アラビアーナ国と環境条件は同じである。蜃気楼の女として、日本の若人を洗脳する足掛かりとするには、おあつらえの学校である。しかし、蜃気楼の女たちは男に免疫がない。と言うのも、何が原因か、問題なのか、男が全く誕生しない民族だった。ごくまれに生まれるが、1000年に一人? アラビアーナ国が誕生してから2000年、男はたったの二人しか誕生していない。だから、女王妃として育った18年間、宮殿に住むラービアは、男の肉体など知るよしもなく育った。ラービア自身が男、女に執着しない性格ではあったが、自分の肉体的な構造と別のパーツを持つ男には興味があることはあった。それは純真な興味からで性欲とは関係がなかった。彼女は周辺の女たちから愛情を注がれ、年齢の近い側近との友情にも恵まれ、天真爛漫に育った。基本、淑女であり、純真、無垢、清楚な少女でもあり、健康的な肉体に恵まれ、安田尚子と性格は極めて似ていた。健康であるが故、性欲も人並みであったことも同じである。どの程度が、人並み、という定義も難しいが、とにかく、ムラムラ、時々したくなる、という正常な生殖活動を維持するための性欲と言えた。二人は、国籍、家族、環境は全く違ってはいたが、人間としての根っこは同じだった。
