
蜃気楼の女
第2章 魔性の女・安田尚子
二人は最後の追い込みとして、受験1ヶ月前、毎日、隣り合って机に向かっていた。土日は朝から晩まで二人きりで部屋にこもり勉強した。この異常な二人だけの日々が悪魔の超能力者誕生のカウントダウンとなった。
ついに、翌日が東大受験日に迫ったとき、偶発的に悪魔の誕生の儀式が始まってしまった。
場所は尚子の勉強部屋。この日も、児玉は最後の家庭教師として尚子の隣に座っていた。児玉はいつものように教えていたが、午後2時、ついに家庭教師としての役目を終えることになった、という感慨が湧き上がった。
尚子は、やれることはやって、これまでやったことを明日、試験会場で全力を出して向かうだけと思えた。自信と明日への活力が備わった。尚子は児玉に感謝の気持ちでいっぱいになった。この気持ちを児玉に伝えたかった。
ピピ、尚子の部屋の置き時計が午後2時のチャイムを鳴らした。 児玉は自分の腕時計を確認した。
「午後2時、時間だね」
児玉が尚子に告げた。鉛筆でノートに書き込んでいた尚子は動きを止め、顔を上げると、児玉に顔を向けた。真剣だった尚子の顔が笑顔に変わった。きょうまで頑張ってきた充足感がにじみ出ていた。こういうときの、この子の笑顔は最高だな、抱きしめたいな、と児玉は心の底から思った。
尚子は持っていたペンを静かに机の上に置くと、体を児玉に向けた。
「先生、きょうまでありがとうございました。明日、全力で戦って参ります!」
そう言って深く頭を下げた尚子は、ゆっくり頭を元に戻してから、児玉の顔を見つめた。児玉もまた尚子を見つめた。
「僕がきみに教えてあげることはもうない。なぜなら、きみは明日受験をすることで合格するからだ。後は、僕にできることは、きみが落ち着いて明日の試験を受けられるよう祈るだけだ。明日、きみは一人で立ち向かうが、僕がいつも応援していることを忘れないでほしい」
ついに、翌日が東大受験日に迫ったとき、偶発的に悪魔の誕生の儀式が始まってしまった。
場所は尚子の勉強部屋。この日も、児玉は最後の家庭教師として尚子の隣に座っていた。児玉はいつものように教えていたが、午後2時、ついに家庭教師としての役目を終えることになった、という感慨が湧き上がった。
尚子は、やれることはやって、これまでやったことを明日、試験会場で全力を出して向かうだけと思えた。自信と明日への活力が備わった。尚子は児玉に感謝の気持ちでいっぱいになった。この気持ちを児玉に伝えたかった。
ピピ、尚子の部屋の置き時計が午後2時のチャイムを鳴らした。 児玉は自分の腕時計を確認した。
「午後2時、時間だね」
児玉が尚子に告げた。鉛筆でノートに書き込んでいた尚子は動きを止め、顔を上げると、児玉に顔を向けた。真剣だった尚子の顔が笑顔に変わった。きょうまで頑張ってきた充足感がにじみ出ていた。こういうときの、この子の笑顔は最高だな、抱きしめたいな、と児玉は心の底から思った。
尚子は持っていたペンを静かに机の上に置くと、体を児玉に向けた。
「先生、きょうまでありがとうございました。明日、全力で戦って参ります!」
そう言って深く頭を下げた尚子は、ゆっくり頭を元に戻してから、児玉の顔を見つめた。児玉もまた尚子を見つめた。
「僕がきみに教えてあげることはもうない。なぜなら、きみは明日受験をすることで合格するからだ。後は、僕にできることは、きみが落ち着いて明日の試験を受けられるよう祈るだけだ。明日、きみは一人で立ち向かうが、僕がいつも応援していることを忘れないでほしい」
