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蜃気楼の女

第21章 学園

 自分の体を提供することなく、あまりにも簡単に学園の運営を任せてもらえそうになった櫻子は、当初の目的通りすんなりいったので拍子抜けした。しかし、これから老いたおじいさんのご機嫌を取らなくてはならないことは、交渉前から何か条件があるものと予想している。交換条件に自分の体を餌にすることは、当然のごとく、考えていた。それが、そうしなくても、すんなり、取りあえず、学園長代行の地位を得ることができたのだから、由としよう。と思ったものの、櫻子自身、本当は異性である学園長とセックスすることに期待があった。以前から時々想像はしたりしていたが、男性とどうセックスをするのかイメージが今一であった。
 宮殿に住んでいたラービアは、側近の女たちから宮殿の外に住む女たちが、フリーセックスをおう歌していることをなんとなく聞いていた。溢れ出る性欲をあがなえきれない一部の蜃気楼の女たちは、隣国に深夜、こっそり侵入しては、若くて元気のいい男を拉致して連れ帰って、拉致した一人の男を、自分たちの欲望のはけ口としてもてあそんで暮らしているらしい。拉致されてきた男は毎日官能の嵐を複数の女たちから受けるのであるから精も根も尽き、疲労困憊で衰弱し、大抵、興奮のあまり心不全を起こし腹上死しているという。ラービアは側近からちまたで実践されている男との情事に、女とは違う官能に関心をもっていた。
 宮殿内に女王妃として祭られている状態で、そんな体験も自由にできない櫻子は、男の体を自分とまぐわせて、どんな営みをするのか? 未知の体験に興味が尽きなかった。だから、自分の体をいたわってくれそうな、経験豊富な学園長となら、心を許し、交わってもいい、と考えていた。その情事のことを思い出していた櫻子は、隣に座る学園長の顔に近づけた顔を、更に近づけ、乾燥した学園長のカラカラにしおれた唇に自分の唇を吸い寄せられるように近づけていく。そのすぐ直前で、櫻子は学園長の眼を見て言った。
「あたしのこと、抱きたくないの? 抱くことを条件にしないの? 」
 自分の体を餌として釣ろうとしていた櫻子は、自分の体が餌として、学園長には魅力がないのかと疑問を持ち始めていた。訳を知りたい。口をすぼめ、掠れた声をやっと絞り出した櫻子は、学園長の額のしわをじっと見つめ、返事を待った。

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