蜃気楼の女
第23章 櫻子VS尚子
そのとき、調理室から尚子がまた現れた。壁に吹き飛ばされて体の手足が変な方向に折れた尚子を見て、もう一人の尚子は一瞬後ずさって、膝から崩れると、床に尻を付けて座り込んだ。
「ハー、何、これ? マジでヤバかったー! ドールで良かったー、あたし、こうなってたもの、アー 怖ーい、お姉さまねー」
失意に打ちひしがれていた櫻子は、抱いていた平八郎の上半身から顔だけを尚子の方向へ向けた。たたきつぶして身動きしない尚子のそばに、尚子がへたり込んで肩で息をしていた。
「エェー あんたが二人? ど…… どういうこと??」
二人の尚子を見た櫻子は何が何だか、訳が分からなくなった。床に座り込んでいた尚子は、顔を櫻子に向けて慌てるように言った。
「それって、ドールです。人形です。かなり精巧なアンドロイドです。まだ、指示通りにしか動かないので、基礎の き、ができたって段階です。学園長本体は別室で元気にしていらっしゃいますのでご安心ください。それでは、これから学園長のところへご案内します」
「何? これは平八さんの人形なの? 人形を使ってあたしをだましたの?」
「ウーーーン だました、って言うか、このドールの性能を櫻子さんに見てほしかっただけです。深い意味はありません。学園長もこういうテクノロジーが好きな人なんでこういう展開を仕組んだんです。学園長って、結構、いたずら好きで、お茶目なんですよ。でも、結果、櫻子さんを怒らすようなことになってしまって、申しわけありません、ごめんなさい!」
そう言って立ち上がった尚子は、気をつけの姿勢を取り、両手のひらを膝まで伸ばし深く腰を折って頭を下げた。櫻子は今での怒りが何だったの? 自分が愚かに思えてきた。
櫻子の怒りが静まったと感じた尚子は、何も言わずに櫻子の前に来た。
「改めまして、安田尚子です。お姉さま、どうぞよろしくお願いします」
にっこり笑った尚子は、右手を差し出し、握手を求めた。櫻子は顔を横に向けて、そっぽを向いた。
「ふん! あんたね、絶対、許さないから!」
「ハー、何、これ? マジでヤバかったー! ドールで良かったー、あたし、こうなってたもの、アー 怖ーい、お姉さまねー」
失意に打ちひしがれていた櫻子は、抱いていた平八郎の上半身から顔だけを尚子の方向へ向けた。たたきつぶして身動きしない尚子のそばに、尚子がへたり込んで肩で息をしていた。
「エェー あんたが二人? ど…… どういうこと??」
二人の尚子を見た櫻子は何が何だか、訳が分からなくなった。床に座り込んでいた尚子は、顔を櫻子に向けて慌てるように言った。
「それって、ドールです。人形です。かなり精巧なアンドロイドです。まだ、指示通りにしか動かないので、基礎の き、ができたって段階です。学園長本体は別室で元気にしていらっしゃいますのでご安心ください。それでは、これから学園長のところへご案内します」
「何? これは平八さんの人形なの? 人形を使ってあたしをだましたの?」
「ウーーーン だました、って言うか、このドールの性能を櫻子さんに見てほしかっただけです。深い意味はありません。学園長もこういうテクノロジーが好きな人なんでこういう展開を仕組んだんです。学園長って、結構、いたずら好きで、お茶目なんですよ。でも、結果、櫻子さんを怒らすようなことになってしまって、申しわけありません、ごめんなさい!」
そう言って立ち上がった尚子は、気をつけの姿勢を取り、両手のひらを膝まで伸ばし深く腰を折って頭を下げた。櫻子は今での怒りが何だったの? 自分が愚かに思えてきた。
櫻子の怒りが静まったと感じた尚子は、何も言わずに櫻子の前に来た。
「改めまして、安田尚子です。お姉さま、どうぞよろしくお願いします」
にっこり笑った尚子は、右手を差し出し、握手を求めた。櫻子は顔を横に向けて、そっぽを向いた。
「ふん! あんたね、絶対、許さないから!」