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蜃気楼の女

第2章 魔性の女・安田尚子

 突然、かわいらしい笑顔の尚子がいつになく真剣な顔になった。
「えっ 何かな? きみの方法でしてもらいたいこと? もちろん、僕にできることなら、何だってやってあげるよ。僕にはきみが明日落ち着いて試験を受けられるように祈ることしか考えつかなかったからね…… さあ、何でも言って……」
「フフ? 何でも? 絶対ですよ、先生、うれしい…… フフフ……」
 児玉にはさっきまで不安そうな顔をしていた尚子の顔がぱっと明るくひょうへんしたように見えた。
「さあ、遠慮せず言ってごらん。僕ができることは限られているけどね…… できることは何でもするから」
 尚子はしばらくうつむいて黙った。沈黙が10秒くらい続いた。
「先生…… 先生のこと、あたし、大好きです…… だから…… あたしを先生の彼女にしてください……」
 そう言うなり、尚子は顔を真っ赤にして進一の胸に顔を押しつけてきた。
「アアー…… 恥ずかしい…… ついに告白してしまいました、先生……」
 顔を両手で隠しながら言う尚子の声が掠れていた。進一は顔を隠す尚子の手に、自分の両手を重ねた。児玉も尚子のことは妹のように思っていた。もちろん、今でも好きだ。ファーストキスを尚子に与えてから約3年間、尚子は恋愛もせずに勉強してきた。でも、少女だと思っていた尚子も18歳、りっぱな女性になっていた。児玉は尚子からの告白を嬉しく思った。児玉はここで大きな勘違いをしていた。尚子が恋愛をしないで頑張ってきたのは、ただ、児玉とセックスしたいため、他の男に目がいかなかった。尚子は進一と激しく愛にまみれたセックスをしたい。それが唯一の望みだった。
「そうかい、これからは自分の発言はしっかり責任を持つこと…… 顔を見せて……」
 児玉はそう言って、尚子は顔を隠していた手を少しずつ下ろし膝の上に置いた。児玉は自分を見つめる尚子の目を見つめた。
「僕もきみのことは好きだよ。いや、僕も大好きだ……」

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