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蜃気楼の女

第25章 1週間前

 フリーライターの橋本浩一は教育者・田所平八郎を約3年間追ってきた。彼の裏の顔を暴露するために、暇さえあれば、この学園へやってきて田所に取材のアポを取るため、正門前で電話していた。
 田所は女子高等学園を作っていたが、基本、江戸時代の花魁(おいらん)を現代社会に誕生させるため、異常なほどの執念を燃やしていた。求められる社交界の現代版花魁(おいらん)を養成している。女性ならではの特化した才能を磨く。それが彼の本質的な教育理念だ。表向きは、どこにでもある女学校である。しかし、実はリーダー的な指導者に取り入るためのテクニックを磨ける女子高等学校として高所得世帯に知られていた。つまり、ハイスペック・ソーシャル・ホステスを養成するカリキュラムに力を注いでいた。橋本から見れば、体裁のいい、高級売春婦の養成所としか思えなかった。相手を究極の官能の世界に導くプロフェッショナル。手段を選ばないハイスペック・テクニックを指導、実演、実践する売春婦養成所だ。江戸時代ならいざ知らず、この現代社会で花魁(おいらん)を復活させるなど、言語道断だ。許さないぞ、田所。おまえは女性の敵だ。おまえを断罪するぞ。橋本は異様な執念を燃やしていた。

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