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蜃気楼の女

第26章 屈強の男・橋本浩一

 尚子は胸を橋本に密着させるたび、困って顔をしかめている反応を見て楽しんでいた。
(彼、父の名前であたしに興味を持ってくれたようだわ。やはり自宅に連れてきたのは大正解。これで取り込み第1歩、成功よ。お父さんの名前の効果はさすがだわ……)
 尚子は口にこそ出さなかったが、表情にうれしさがあふれ出ていた。身内にそういう政府高官がいることで、尚子の魔性能力はますます磨きが掛かっていた。父親の目指す日本国の支配も遠くないわ、と尚子ははほ笑んだ。その父の野心を尚子がさらに引き継ぐ。尚子の本性は、橋本の考える花魁(おいらん)養成学科とか言うレベルではなく、尚子の本当の恐ろしさは魔性能力を使えるということだった。尚子はこんなまどろっこしいことをせず、尚子の魔性能力で橋本の脳を操作すれば直ぐ済むことだった。尚子はあえてしなかった。橋本を訳もなく好きになってしまった。学園長から橋本のことは聞かされていたが、今日、橋本本人に会って、完全にとりこになってしまった。尚子はなぜこんな男を好きになってしまうのか、自分自身の嗜好(しこう)を理解できなかった。久しぶりに緊張感を感じる異性へのレイプである。1番は隣に住む児玉進一だった。久しぶりにこみ上げてくる橋本への性的衝動を押さえるのに、尚子は必死だった。この人を早く犯してしまいたい、抱きたい衝動が、ふつふつと尚子の中で増大していた。歩いてくる途中、橋本にエッチな心が起きるよう誘惑をしてきたが、自分ほうの性欲が限界を超えそうだった。尚子の人間に対する異常求愛は遺伝的なものかも知れない。

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