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蜃気楼の女

第27章 後継者・橋本浩一

「あたしはおじさんのこと…… 大好きでも…… …… やっぱり…… だめなの?……」
「お互いが好きで、自然にする行為なんだよ、そうなるまで、お互いを良く知ること…… いいかい?」
 尚子は橋本の言うことが信じられなかった。男は誰とでもできるものと思っていた。しかし、超能力がまったく橋本には効かないし、橋本より腕力のない尚子には、橋本を強引にレイプすることは不可能だった。尚子は橋本の隣に座りながら思った。このまま、橋本を怒らせて、あたしをたたかせようかと、考えたが止めた。橋本が友だち以上の関係になったらしてくれる、と言ってくれている。それを信じるしかない。そうなってもらうように自分も橋本が好きになってくれるよう付き合っていくしかない、と思った。尚子は橋本をレイプする、という強硬手段を達成できなかったが、楽しいことが先になっただけだと思ったら、そのときが来たときを考えると、うれしくもあった。肉体だけでなく、心と心が通い合うというものも、尚子には心地よいものなんだ、と思い始めた。そう思うと、最初の頃のおじさんといるように、なんか、心が落ち着いてきた。橋本といると心が平穏になる。癒やされていく。
(これって、最初に会ったときの感覚だわ!)
 思わず尚子は叫んでいた。
 橋本は尚子の気持ちが落ち着いたように見えた。欲情していた尚子はつつましく足をそろえて横で座っていた。橋本はやっと、目的である田所の進める教育要綱の説明を尚子から聞くことにした。
 尚子から聞いた田所の教育要綱は、橋本も田所の著書や講演会で聞いた内容と同じだった。
 橋本は、国際社会で日本が要人の家族として入り込むための策略を遂行するための教育専攻学科、ちまたでうわさになっている花魁(おいらん)養成学科の存在について尚子にきいた。
「あたしがその花魁(おいらん)養成学科の生徒の一人ですって? おじさん、それ、ほんとにうわさだわ! あたしがその秘密の花魁(おいらん)学科専攻生だと、おっしゃるの? そんな話術もテクニックもあたしにないことは、今までお話になっていてお分かりになったでしょ? 
 でも、橋本さんを誘惑しようとしたけど、あたしの超能力が通じないの」

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