蜃気楼の女
第28章 決断
そう言いながら、尚子は突然橋本の体に自分の体を密着させてきた。橋本の顔の前に顔を近づけて言った。
「おじさん、あたし、やっぱり、おじさんが好きよ。だから、好きなおじさんに助けてほしい。あたしみたいな変な子を、さっきみたいに正しい道に導いてほしいな」
さっきまで悪魔の心に犯されていた美少女とは別人の尚子がいた。
「おい、顔、近すぎないか?」
橋本は目の前にある尚子の整った顔、きれいな肌に見入ってしまった。本当にきれいな透き通るような肌をした美少女だ、と感心してしまうほど尚子は間近で見ると美しさに時間を忘れ見入ってしまう。この美しさに加え、魔性の能力を持っているのだから、怖いほどの美しさというのであろうか。
「好きという感情は、きみの体の中に日本人の、お父さんの優しい心を受け継いでいるってことだな……」
橋本は頼りなさそうに、見える美少女に腕を力強く握られている。おいていかれないように捕まった幼い子どものようだ。今は見かけは頼りなさそうに見えるが、将来、もっとも、恐ろしい魔性能力を持つ女性へと成長するに違いない。まだ、完全に魔性能力を持っていない今だから優しい尚子に引き戻せるだろう。橋本に対し、能力を使えていない尚子を前にして、橋本の本能が感じる。尚子はこれから、人類愛、愛情、博愛、あらゆる愛をこれから成長しながらいろんな人から愛を吸収し、世界を救ってくれる、という根拠のない確信を感じた。
「おじさん、きょうはここへ泊まっていってほしいな、聞いてほしいことがたくさんあるの……」
「いくら何でもそれは不可能だろう。お母さんが許可しないよ」
「大丈夫よ、母は橋本さんのことを知ってるから…… 母も超能力を使えるから、玄関で会った橋本さんがどんな人か分かってるはずだから……」
「ええー、何、それ? もう、俺、なんだか訳が分からなくなってきたよ……」
「おじさん、ガッツよ!」
そう言って、尚子は両腕を上げておどけて見せた。白い肌の二の腕がまぶしい。橋本にはかわいい仕草をする尚子が愛おしく思えた。隣に座っていた尚子は上げた腕を橋本の肩に乗せて、寄りかかった。そのまま、橋本は尚子の体重に押されて倒れてしまった。尚子は橋本の背中を包むように倒れた。ソファーの背もたれの間に挟まったような変な姿勢になった。苦しいのか、尚子は泣いているような声を出した。
「おじさん、あたし、やっぱり、おじさんが好きよ。だから、好きなおじさんに助けてほしい。あたしみたいな変な子を、さっきみたいに正しい道に導いてほしいな」
さっきまで悪魔の心に犯されていた美少女とは別人の尚子がいた。
「おい、顔、近すぎないか?」
橋本は目の前にある尚子の整った顔、きれいな肌に見入ってしまった。本当にきれいな透き通るような肌をした美少女だ、と感心してしまうほど尚子は間近で見ると美しさに時間を忘れ見入ってしまう。この美しさに加え、魔性の能力を持っているのだから、怖いほどの美しさというのであろうか。
「好きという感情は、きみの体の中に日本人の、お父さんの優しい心を受け継いでいるってことだな……」
橋本は頼りなさそうに、見える美少女に腕を力強く握られている。おいていかれないように捕まった幼い子どものようだ。今は見かけは頼りなさそうに見えるが、将来、もっとも、恐ろしい魔性能力を持つ女性へと成長するに違いない。まだ、完全に魔性能力を持っていない今だから優しい尚子に引き戻せるだろう。橋本に対し、能力を使えていない尚子を前にして、橋本の本能が感じる。尚子はこれから、人類愛、愛情、博愛、あらゆる愛をこれから成長しながらいろんな人から愛を吸収し、世界を救ってくれる、という根拠のない確信を感じた。
「おじさん、きょうはここへ泊まっていってほしいな、聞いてほしいことがたくさんあるの……」
「いくら何でもそれは不可能だろう。お母さんが許可しないよ」
「大丈夫よ、母は橋本さんのことを知ってるから…… 母も超能力を使えるから、玄関で会った橋本さんがどんな人か分かってるはずだから……」
「ええー、何、それ? もう、俺、なんだか訳が分からなくなってきたよ……」
「おじさん、ガッツよ!」
そう言って、尚子は両腕を上げておどけて見せた。白い肌の二の腕がまぶしい。橋本にはかわいい仕草をする尚子が愛おしく思えた。隣に座っていた尚子は上げた腕を橋本の肩に乗せて、寄りかかった。そのまま、橋本は尚子の体重に押されて倒れてしまった。尚子は橋本の背中を包むように倒れた。ソファーの背もたれの間に挟まったような変な姿勢になった。苦しいのか、尚子は泣いているような声を出した。