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蜃気楼の女

第28章 決断

「おい、冗談じゃないぞ! 俺を実験台にするつもりか?」
「その安全性の説明のため、これから明日にかけて、たっぷり時間を取りました。おじさんの脳なら理解が可能なはずです。それだけの能力があることは、すでに、3年前から学園長が検証して、お墨付きです。そして、あさっては学園長の意思を抽出した脳を、おじさんの脳に融合させます」
「おいおい、俺は零和のフランケンシュタインになるのか? 冗談じゃないぞ、まっぴら、ゴメンだぞ!」
「あたしから説明を聞いたおじさんは、あさってになれば、絶対拒みません…… すでに、検証済みです…… 」
 そう言って、尚子は頬につけていた橋本の腕を離して橋本の顔を見つめた。
「おじさんは人のために死ぬことができる人なんです」
 尚子はそう言って、橋本の背中に胸を押しつけ、しくしく、声を出しながら泣き始めた。
「おじさん、今夜、あたしと一緒に寝てください…… あっ…… 変なことをしたりしません、普通に寝てほしいの…… 今晩、友だちとして、あたしに正しい道に導いてくださる方と一緒に生きるスタートにしたいの…… あたしにもこれから生きる覚悟がほしいの…… お願いです……」
 橋本はフリーライターとして生きてきた。いろんな著名人を取材し、その人の生き方を広めたい。そんな大きな志を抱く人を紹介し、読者の模範、参考、何かの力になれれば、そう思って取材してきた。それが、ここまで、他人の人生に加担していいのであろうか。俺はそんな大きな器ではない。
「おじさん、そう言う、人間だよ! あたしはそう思う。だから、一緒に寝てほしい!他人のままではない証を、今夜、ほしいんです…… そうでないと、もう、どうしていいのか…… あたし、何をよりどころにしていいのか、もう…… 分からないの……」
 橋本は背中で涙を流しているであろう尚子を想像した。
「きみは俺の考えていることを読めるのか??」
「おじさん、ごめんなさい…… だめなら、もう、そんなことしませんから、だから、今夜だけ、あたしと寝てほしいの……もちろん、こうやって寄り添って寝るだけでいいのよ、おじさんに嫌われたくないから……さっきみたいに、変な気は、多分…… 起こさないと思うから」

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