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蜃気楼の女

第28章 決断

 橋本は背中の後ろで泣く尚子を見るために起き上がった。恥ずかしいのか、尚子は顔を手のひらで覆った。橋本は顔を覆っている尚子の手首をつかんで、顔から離した。橋本は尚子の顔を見ながらすぐ目の前に横たわった。尚子がすぐに橋本に覆い被さるように抱きついてきた。
「おじさん…… あったかいな…… うれしい…… な……」
 尚子の声は小さく、今までの思いを訴えるにはあまりにもか細かった。ただ、泣いていた。そんな尚子の弱々しさを見た橋本は、この子を守ってあげようと、心から思った。この子の超能力はこの子が望んだ力ではないのだ。この子が一番、この力に恐怖している。制御のできない力に。

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