
蜃気楼の女
第29章 初めての学園
あなたは気づいておられないようですが、あなたはルポライターとして、数々の著名人の取材をして、的確な質問で核心に触れた著名人の回答を引き出してきました。心を開かせ真の回答を得た。その記事は、あなたは悩める人の案内になればと取材したのでしょうが、著名な有識者にも大変好評でした。
これから、あなたにはその特殊能力を山野櫻子さんに全力を注いでいただきたい。彼女はとても悲しい生い立ちを背負って生きてきました。アラビアーナ国2000年の怨念を背負っています。その怨念はすさまじいエネルギーです。それを鎮めることができるのはあなたの超能力だけだからです。
どうか、お願いです、あなたにこの学園の将来、日本の将来、世界の将来とも言える、教育界の本拠地となる学園を継承していただきたい……」
そう言って、天井を見て淡々と話していた田所は、突然、唇を小刻みに震わせた。続きの言葉を待っていた橋本は隣に立つ尚子を見た。
「おい…… 様子が変じゃないか?」
尚子は橋本の脇で、橋本の左腕にしがみつきながら小さく震えていた。
「たぶん…… たった今…… 学園長の痛みを止める最後の薬が学園長に投入されたのだと思います。学園長は延命治療を希望しませんでした。自然の摂理に従う。そう申しておりました。ただ、苦痛がないよう安らかな死を迎えたいと、おっしゃっていました。わたしが設計した人工知能付き医療プログラムが機能を遂行したのだと思います…… つまり、安楽死へのプログラムです……」
尚子はつかんでいた橋本の腕から手を離し、学園長の顔をのぞき込んだ。
「日本では…… 安楽死は認可されていないだろ?」
橋本は学園長の顔をのぞき込んでいる尚子に言った。尚子は橋本に顔を向けて笑顔で言った。
「おじさん、見て、学園長が満面の笑顔です。このようなお顔、何年ぶりかしら……」
そう言った尚子は手のひらを学園長の額の上に置いた。
「学園長に誓います。あたし、橋本さんにあたしの力を捧げます。安心して天国に召されてください……」
尚子はそう言うと、学園長の胸に顔を預け泣き崩れた。尚子の小さな背中が、すすり泣くたびに小さく上下した。橋本は尚子に近づくと、彼女の背中に手を置いて上下にゆっくりさすった。
これから、あなたにはその特殊能力を山野櫻子さんに全力を注いでいただきたい。彼女はとても悲しい生い立ちを背負って生きてきました。アラビアーナ国2000年の怨念を背負っています。その怨念はすさまじいエネルギーです。それを鎮めることができるのはあなたの超能力だけだからです。
どうか、お願いです、あなたにこの学園の将来、日本の将来、世界の将来とも言える、教育界の本拠地となる学園を継承していただきたい……」
そう言って、天井を見て淡々と話していた田所は、突然、唇を小刻みに震わせた。続きの言葉を待っていた橋本は隣に立つ尚子を見た。
「おい…… 様子が変じゃないか?」
尚子は橋本の脇で、橋本の左腕にしがみつきながら小さく震えていた。
「たぶん…… たった今…… 学園長の痛みを止める最後の薬が学園長に投入されたのだと思います。学園長は延命治療を希望しませんでした。自然の摂理に従う。そう申しておりました。ただ、苦痛がないよう安らかな死を迎えたいと、おっしゃっていました。わたしが設計した人工知能付き医療プログラムが機能を遂行したのだと思います…… つまり、安楽死へのプログラムです……」
尚子はつかんでいた橋本の腕から手を離し、学園長の顔をのぞき込んだ。
「日本では…… 安楽死は認可されていないだろ?」
橋本は学園長の顔をのぞき込んでいる尚子に言った。尚子は橋本に顔を向けて笑顔で言った。
「おじさん、見て、学園長が満面の笑顔です。このようなお顔、何年ぶりかしら……」
そう言った尚子は手のひらを学園長の額の上に置いた。
「学園長に誓います。あたし、橋本さんにあたしの力を捧げます。安心して天国に召されてください……」
尚子はそう言うと、学園長の胸に顔を預け泣き崩れた。尚子の小さな背中が、すすり泣くたびに小さく上下した。橋本は尚子に近づくと、彼女の背中に手を置いて上下にゆっくりさすった。
