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蜃気楼の女

第30章 尚子と橋本の決意

「進一君に直接性欲をぶつけるからきみの心の奥に、罪悪感が生まれる。進一君ではないけど、進一君と同じ形のドールを作ればいい。きみの頭脳を使えば、ドールを製作できると思うよ」
 それから、学園の寮の空き部屋をドール開発の研究に使うといい、と学園長が資金提供してくださることになりました。なぜ、そんな変な開発をあたしのためにしてくれるのか、分かりませんでした。開発と言っても、初期は市販のアダルト・グッズと同じでした。進一と全く同じ体型のドールを寸分狂わず製作しました。それから、動けるように、改良を加えていきました。肉棒も進一のものを実際に見て同じに作りました。今、ドールに意思を加え、ドールが自分の命令で動けるようになりました。
 この意志は、メモリの再生細胞へ融合させるというさらなる向上を求める医療器具への応用へとつながりました。
 学園長は言語、文字だけではなく、脳とテレパシーによる会話ができる人でした。そのことは、わたしも超能力者だから分かったことです。周辺の人たちは学園長が超能力者だなんて思っていませんでしたので、生徒が悩みを打ち明けるまでもなく、学園長はすべての生徒の悩みを瞬時に理解されていました。
 悩みを理解してくれる学園長に、たくさんの女子生徒が慕いました。もちろん、自分のことを特別に扱ってくれる方だと思って、学園長に結婚を迫る女子生徒もいました。
 でも、学園長はどなたかを決められないとおっしゃって、すべての方を等しく愛されました。だから、いつも周辺の女性から慕われても、特定の方を愛せず、みな家族とおっしゃっていました。
 しかし、おととい、そんな学園長の心を動かす女性が目の前に訪れ、その方と結婚される決心をされました。この女性のお父様は、学園長が大学生の時、旅先で知り合われたアラビアーナ国王・マスウード様と聞いております。
 学園長は、奥さまの存在を日本でだけでも、確定させてあげたい、とおっしゃっていました。奥さまのふるさとであるアラビアーナ国は、知る人ぞ知る国で、国際的に認知されていません。一部の先進国首脳会議で極秘事項とされていました。国の存在が最高機密になっています。いまだに、実際、存在している国が国連から認知されることもなく、首脳だけの最高機密とされ、隠されてきました。

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