テキストサイズ

蜃気楼の女

第30章 尚子と橋本の決意

 橋本は、田所と約束した以上、田所のメモリが移るまで時間が掛かるというその間、最低限の経緯は尚子に聞いておきたかった。
「おととい、学園長は山野櫻子様にお会いし、衝撃を受けたとおっしゃっていました。桁違いの超能力を備えていることもありますが、学園長は等しく愛するとおっしゃっていましたが、櫻子様にお会いし、一目ぼれしてしまったようで、今までの等しく愛するという信念は吹き飛んだようです。
 学園長は彼女を日本に招くに当たり、最も恐れたことは、彼女の能力はあたしとは比べようもなく、強大な超能力があるということです。彼女の恐ろしいまでの力に恐怖した彼女のお父様は、教育界で高名な学園長に助けを求めました。彼女はあたしみたいに脳に働きかけるだけの能力だけではありません。彼女には超能力を使って、物質を移動させることができる能力があります。物質を原子サイズに分解させ、それを移動させることが可能です。そして、物質をイメージしたところへ移動させてから、元の物質に形を戻すことが可能な能力です。その経過を考えると、彼女の意思でその物質を元に戻さなければ、原子サイズに破壊するいう最悪の結果になります。そういう超過激的な能力と表裏一体なのです。
 彼女の能力はアラビアーナ国に文明が介入することを防ぐ、という目的で、その能力を使わせ、彼女にエネルギーをため込まないよう消費させてきました。ラービア様の破壊的なエネルギーを常に使わせることで、爆発的な破壊行動を抑制するというプログラムを国王自らの指示で、実施してきたのです。
 国王は隣国の文明機器を国内に入らないようにすること、という名目でラービア様に命じてきました。ラービア様が成長するにつれ、その破壊エネルギー量は、アラビアーナ国に入る文明機器を排除するだけでは、能力の成長が巨大化しすぎてきたのです。数年前から余ったエネルギーを放出させきれず、アラビアーナ国の時空間が彼女の念動力により、振動し空間がゆがみ始めたのです。その力が日本にいるあたしにも、その桁違いの能力の強さを感じていました。あたし、彼女が恐い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ