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蜃気楼の女

第30章 尚子と橋本の決意

 学園長はその力を押さえるには、壮大で、包み込む人類愛が必要とおっしゃっていました。学園長が婚姻という手続きをどうして取ったのか、あたしには不明です。結婚が彼女にどういう影響があるのかあたしには分かりません。とにかく、学園長がおっしゃるには、彼女の巨大化、暴走化する超能力を押さえるには、婚姻という愛の契約を日本国形式の日本戸籍法という契約で示して上げる必要があると言うことです。テレパシーで通じるアラビアーナ国人は文字という文化を必要としてきませんでした。
 まもなく、学園長代行のAndroidの機能が停止する時間ですので、あたしは錯乱するであろう櫻子様を鎮めるため、これからホローをするため、櫻子様のところへ向かいます。naokoタイプのAndroidに櫻子様の対応を任せていますが、あたしではないので、ミスを犯すかもしれません。それが心配です。そのミスで東京が消滅することになったら、あたしたちも数分で原子サイズに粉砕されるでしょう。
 だから、おじさんは学園長のメモリが完全に移植されるまで、おとなしく、ベッドで寝ていてください。学園長の記憶がおじさんの脳に挿入されれば、すべて理解できることなので、とにかく、おじさんは安静に寝ていてください。
 奥様は母国で国民からラービア女王妃と慕われていた心の優しい方です。わたしは基本的に彼女が好きです。その優しいラービア様は、邪心に侵食されて国が破壊される恐れが出たため、父である国王によって、国を追放された悲しい境遇の方です。今、どなたも味方がいない。だから、誰かに頼りたくて、仮に好きになった振りをした。それが学園長ではないかと思います。特異な環境で育てられたラービア様に好きという感情があるのか、私には分かりません。
 まもなく、彼女が学園長の体調の異変に気づき、この部屋に駆け込んできます。学園長、いや、おじさんに会うため、櫻子様が駆け込んでくるのです。寝ているおじさんを学園長と思って、声を掛けるように、あたしが誘導します。それとここに用意した学園長の顔のマスクを付けてください。医療用マスクを付けたりしますから、マスクをかぶっていることは分からないと思います。

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