テキストサイズ

蜃気楼の女

第30章 尚子と橋本の決意

 しかし、決して細かな会話はしないでください。櫻子様は学園長の分身であるAndroidと会話していますから、考え方はすでに熟知されています。おじさんはまだ学園長の脳を受け継いでいません。思考の違うおじさんと話し、彼女に学園長が死んだことが分かったら、逆上したラービア様は日本を物理的に破壊し、日本政府と経済界は壊滅状態にさせられるという予測です…… それも、東京はたったの15分で、彼女一人によって破壊されてしまう。それほど、爆発的な超能力のある怖い女性です。だから、おじさんが学園長と同じ意思が再生されるまでじっとしていてください。分かりましたか? もう、おじさんはおじさんだけの命ではありません…… あたしの命でもあるの……」
 尚子はそう言うと、橋本のそばへ寄ってきて、寝ている橋本のほおに顔を付けてきた。
「フゥーー おじさんって、落ち着くなーーー…… おじさんの命って、今は、あたしにとって、あたしの命よ…… そのくらい、おじさんのことが、好き……よ……
 アラビアーナの女って、好きな人を共有できるの。焼き餅、嫉妬とか、全然、起きないの、どんな人とでも、一緒に好きになった人を愛し合えるの…… 愛を共有することでさらなる快感にしたれる特異体質を持った民族なの。とても不思議な民族よ…… あたしもその血を受け継いでるの…… 奥さまの櫻子様も同じよ…… おじさんも理解できるわ……」
 そう言うと、橋本の顔のそばに自分の顔を寄せてきた。今にもくっつきそうなくらい顔を近づけた尚子は、橋本の顔をしばらく見つめていた。橋本には、進一が好きと言っていた尚子と同じとは思えなかった。
「おじさんの体、筋肉がすごいよね…… ジムで鍛えているの?」
 そう言った尚子は、しばらく橋本の腕の筋肉を確認するかのようにさわった。人差し指を橋本の腕の筋肉にそって移動していく。鼻歌を小さい声で歌い始めた。
「ランランラララ、ラララララララー ランランララ……」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ