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蜃気楼の女

第2章 魔性の女・安田尚子

 児玉は「また2時か?」そう思って戸惑った。白昼夢の連続だ。いや、これが 蜃気楼《しんきろう》というものかもしれない。実像が歪んで見える現象が今この部屋で起こっている。それしか考えられない。それに、まったく、さっきから時間が経過していない。午後2時を行ったり、返ったり、恐ろしい時間の繰り返し。タイムスリップの連鎖。何らかの力が働き、尚子の部屋の時空がゆがんでいる。そんな馬鹿げている。そんなことが起きるわけがない。ただ単に、僕が精神病を発症したに違いない。いや、病気を発症したものが、そんな冷静な診断ができるか? 
 児玉が今までの尚子とのやり取りの経過を思い出そうとした。すると、あまりにエロチックな現象が起きすぎて、思い出し始めると、児玉の分身が大きく怒張し始めた。
「初めまして、児玉さん……」
 児玉の目の前に、尚子とは違う知らない女が立っていた。
「あたし、山野櫻子《やまのさくらこ》って申します。あたしは魔性の女です。尚子さんもあたしと同じ魔性の女です。そんなこと突然、言われても、驚いちゃいますよね。まあ、あたしたち、世間で言うところの超能力者と理解していただいてよろしいか、と思います。きょうは尚子さんにとって歴史的な日になります。そして、児玉さんはその歴史的な日に立ち会える貴重な方です。この幸運を得られること、まことにおめでとうございます」
 山野櫻子と名乗る女が突然、尚子の隣に立って両手で拍手をした。今までに一度も会ったことのない女性、いや、突然、訳の分からないことをいう、胡散臭い女である。それも、エロさ全開、グラマーな体がタイトな服からはみ出ているといった感じだ。なぜに胸の谷間をそんなにのぞけと言わんばかりの生地の少なさ。児玉は櫻子の胸の谷間に目を向けてしまう。冷静さを装いつつ、勃起した股間を両手で隠していた。
「いつの間に、この部屋に 突然、現れたの? どうなってるの?」

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