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蜃気楼の女

第2章 魔性の女・安田尚子

 首をかしげながら児玉は尚子の顔を見た。尚子は櫻子の隣に並び、ぴったり体を寄せていた。
「ねえ、櫻子様って、あたしのお姉様なのよ…… 進ちゃん、櫻子様って美人で驚いちゃうでしょ? あたしのお姉さまで、学校で仲良くしていただいていますのよ……」
 興奮気味に話す尚子の後ろに、櫻子が回ると、尚子の髪をいとおしそうに撫でだした。撫でている手を尚子の胸に下ろし、さらに胸をブラウスの上からなでる。尚子は胸を愛ぶされて気持ちいいのか口を半分だけ開け、櫻子を見上げていた。クリクリした眼を細め、眩しそうに櫻子を見ている。いつもの尚子はもうそこにはいなかった。櫻子が言うように、尚子は魔性に変身したに違いない。とは言っても、児玉には魔性がどんなものか、全然、検討もつかなかったがそんな気がした。児玉は魔性と言われる女をかつて見たことがなかったし、今の二人が自ら魔性というならそうだろう。そう思うしかない。
「これからあたしたちが、あなたをあたしたちの魔性パワーである官能技で骨抜き、メロメロにして差し上げますわね…… この儀式を終えると、あなたも超能力者をも超える魔性の男になれるの、フフフ……」
 櫻子は右手の平を児玉の前にさっと突き出し、親指を垂直に立てた。その親指を櫻子は自分の口元に近づけると、舌を出して、親指の根元から指に沿ってゆっくりなめ回し始めた。児玉はこの櫻子の妖艶な行動にただならない恐怖を感じた。まずい、こいつらに魔性にされてしまう。児玉は魔性がどんなものか分からないけど、魔性にされたら、櫻子みたいになるのかと思うと、恐怖で全身が凍り付いた。
(女の櫻子はいいが、僕は男だ。なりたくない)
 先ほどまで元気だった芯棒は、さらに、これから繰り出すという官能技への期待感で怒張を増加させていた。
「あー? きみは? 僕に何をするつもりだ?」

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