テキストサイズ

蜃気楼の女

第31章 成功した発明と失敗した発明

 橋本の顔はどちらかといえば強面(こわもて)といわれる顔立ち。それでも、橋本の能力でだれもが心を開き好意を寄せたので、橋本自身、今まで、自分の顔立ちを気にすることはなかった。尚子の記憶によれば、一般的には任侠もの映画に出てくる無頼漢とか、アウトローもの映画に出てくる鬼気迫る近づけない雰囲気、とか言われる顔立ちだった。
 そう考えると、橋本と学園長は似た雰囲気を顔にたたえた特徴があった。学園長の鼻は天狗とはいかなくても異常な大きさで初対面の人はびっくりするような顔だ。
 しかし、学園長にはその欠点を上回る人の心、思考を理解できる力を持っていた。橋本も同じと言えた。
 アラビアーナ人は顔とか、ルックスを重視しない民族で、尚子も会った当初から橋本を顔のルックスで判断していなかった。
 尚子の母・ナルミは純粋なアラビアーナ人で、尚子は日本人の父との間に生まれ、当然ながらアラビアーナ人の血をナルミから受け継いでいる。アラビアーナ人の女は、パートナーの要件として、強じんな精神と肉体を持った男を求めた。虐げられてきたアラビアーナ人が種を存続するために求められた血のおきてがあった。アラビアーナ人の女は、数千年の歴史の経過において、男性の筋肉質の体を見ると、性的に興奮し発情するよう遺伝的なプログラムが組み込まれた。雄が生まれにくい体質を補うための進化があった。女しか生まれない民族的な特性として、男女の肉体的要素を併せ持った女が生まれた。
 狩猟のような過酷な労働に耐えられる体を必要とされる状況では男として活動する肉体が必要だったし、男が生まれにくい民族がゆえに、女は強い性欲を備え、他の民族の雄と性交をするため、隣国の男を物色し、性交をすることで種を存続させてきた。他国の男の精を受け入れ妊娠し、出産するとき、体が無防備になる状態を補完してくれる仲間と集団を組織しともに行動した。そのため、彼女たちは5人一組の集団を組織し、どんな喜怒哀楽も分かち合って生活した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ