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蜃気楼の女

第31章 成功した発明と失敗した発明

 少し喜び気味の橋本は自分の変形した顔に何の違和感も抱いていない。尚子には橋本がむしろ喜んでいるように見えた。
「おじさん、困ったわ、学園長のお顔って、鼻の飛び出た特殊なお顔なのよねー だから、今のAndroidもそのお顔に忠実に作ってあったのよねー どう、しようっかー?」
 尚子は橋本の顔に顔を近づけて困った顔をして見せながら、橋本のほおを手のひらでなでた。
「でもー おじさんがこのお顔で良くても…… おじさん、こんなにお顔になっちゃったら、これから学園の女子に…… モテモテでー …… こ、困るよねー …… なんか、あたしも困るなー 」
「えっ、尚子は別に困ることなんてないだろ?」
「だって、おじさん、今、あたしがしていたこと、ほかの可愛い系の女子にもやってもらったりしないの? 学園長の意思が追加されたら、もう、おじさんじゃないものね、どんな風になるか分かったものじゃないわ! お顔がこんなに変わったんだもの、櫻子様だけなら許せるけど…… おじさん、このお顔で、このマッチョだもの……」
 そう言いながら尚子は少し怒った顔つきになった。
「あーー なんかおじさんが喜んでいる顔を見てたらー…… あたし、気分、超悪いぃー…… かも? アーー なんか、ムカムカして、イライラしてきたぁーーー」
「なあ、尚子、きみはアラビアーナ人の血を受け継いでいるから、一人の男を共有できて、嫉妬とかしないって、たった今しがた、言っていたばかりだろ? それって、今、きみが俺に焼餅を焼いているってことか?」
「うーん、たぶん、遺伝的に、5人までなら嫉妬しないのかなーー って、思ってたのよねー でも、おじさんは二人目なのに、もう、嫉妬しちゃってるみたいだしーーー あたし、好きになった人が進一しかいなかったから自分の気持ちがよく分からなかっただけみたい…… どうしょう? 腹が立ったら、おじさんのことが憎らしくなってきて…… なんかモンモンしてきたゎー 口だけじゃ、許さないーー感じーー」

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