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蜃気楼の女

第31章 成功した発明と失敗した発明

「おじさん、す、すごく、おいしい。でも、もう、行かないと…… 櫻子様の様子を見てくるわ。念を押しますけど、櫻子様がここへ来ても、学園長の死がばれたら、地球は終わることをお忘れなく。当たり障りのない会話で、適当に相づちを打って、答えに困ったら、苦しそうに、黙って、寝てしまってください…… でも、このお顔はどう説明したらいいのかな? そうだ、仮装パーティー用の魔法使いのおばあさんのお面を付けてもいいかも? 酸素マスクとかもしてるから、きっと分からないわ…… たぶん、大丈夫よ……」
 考えても仕方ない、なるようになると尚子は自分に言い聞かせた。櫻子の前で、平八郎タイプAndroidがまだ正常に動いていることを願った。尚子は家具の引き出しから去年文化祭で使った魔法使いのおばあさんのお面をつかむと、橋本に手渡した。鼻が異様に曲がったままのマスクは、学園長の心優しい顔とは真逆だった。生徒の悩みを癒やしてくれる心優しい頼れることのできる先生。学園長を思い出した尚子は涙で視界がくもった。

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