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蜃気楼の女

第32章 櫻子VS尚子

 一方、ラービアは周囲の侍女から優しく養育され、おおらかで屈託なく育った。そう言うベースに邪心が巣くった。その邪心がラービアから取り去られたとき、ラービアによる世界に向けた博愛の種が蒔かれるときが来る。
 学園長は邪悪な心に変わり果てていく己の将来を予知した。ラービアこと山野櫻子の存在を知り、自分が変わり果てた思考に支配される前に、崇高な教育理念を、純粋な意思を、橋本浩一に再生細胞移植術により、善だけの田所を橋本に引き継ぎ、後世に長所だけを引き継ぐことが、学園長の真の願いだった。邪心に支配される前に、自らすい臓にがん細胞を植え付け、膵臓がんで命を絶つ。邪心を自らの命とともに永遠に封じ込める。学園長田所平八郎は、後継者・橋本浩一の出会いで、幸福な最期を迎える計画だった。
 しかし、学園長の計画を察知した邪心は、学園長の完全支配を加速した。

 *

 月曜日、学校の1週間が始まる日というのに。櫻子はベッドに寝ている平八郎に付き添っていた。櫻子のもくろむ学園の乗っ取り計画(将来、拡大路線・日本国の乗っ取り計画(仮称)に名称の変更をし、最終的には主要国の乗っ取り計画(仮称)、最終的に、全世界の乗っ取り計画を完全遂行する予定であった)はまさに頓挫した。櫻子はいらだった。いらだつ原因は平八郎が寝たきりと言うことに尽きる。櫻子の目標達成に必要な一番大切な、彼のあそこも寝たきりだった。彼女は自分の魅力と、魔性能力を使って、年老いたあそこをカチカチにしてあげることもできない無力さを感じた。櫻子のエッチな野望(櫻子はそうは思っていない)は、アラビアーナ国民の祈願でもあった。

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