テキストサイズ

蜃気楼の女

第32章 櫻子VS尚子

 ところが、Androidに記録されたメモリとは違い、橋本に移植されたメモリは、田所の意思が大きく歪曲(わいきょく)してきた現在の脳の細胞を抽出したメモリだ。その脳を、尚子は発明したカプセルで注出した。別の角度で見れば、腐った脳から注出した醜悪な脳細胞だ。田所のすい臓にできた悪性腫瘍は体中に転移をし、脳も悪性腫瘍が転移し、本来の優しい田所の意思が、悪性腫瘍により邪心に変貌を遂げていた。その脳細胞を移植された橋本の運命もまた、大きな変貌を遂げようとしていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ