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蜃気楼の女

第33章 再生細胞移植術後

 しかし、この大発明を、後からカプセルの存在を知った山野櫻子が世界征服の野望のため、利用しようともくろむ。世界征服というと何か良からぬ活用をし、人類を支配して私利私欲に走ることを想像してしまう。
 しかし、故郷アラビアーナ国の宮殿で大切に育てられたラービアは違う。このカプセルを使って、人類から邪心を取り除けないか、と考えた。平八郎一人のレベルではなかった。地球規模で邪心を取り除こうと考えていたのだ。彼女のスケールの大きさは桁違いだった。彼女が怒れば、怒りのパワーは東京都全域を1時間で消滅させることができるパワーを秘めているのである。
 彼女は、このカプセルのサイズを大型にし、細胞を気体から原子に変換し、原子を大気中に放出させる。原子は呼吸により体内、肌への吸着などの方法により人体に浸透される。浸透し体内に取り込まれた原子は、体内に一定期間、全身にくまなく均一に潜伏すると、一気に、原子から液体に戻り、個体となり、人体に新たな細胞を作り、1秒で人体が変貌する。櫻子はそういうプログラムを計画した。
 1回の大気中への放出で、半径数キロメートル内にいる人体をこの装置で変異させる。人類皆脳移植術プログラムである。人類は変異させられたことを知らないうち、1秒というわずかな時間で善良な民族になるのだ。暴力、虐待、いじめ、差別、ハラスメント、支配のない国が、今までにない平和だけの人類愛に満たされた新生国が1秒で誕生する。

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