テキストサイズ

蜃気楼の女

第33章 再生細胞移植術後

 再生細胞原子を注入したカプセルをミサイルに搭載し、日本各地にある防衛軍のミサイル基地から各国に向けて発射し、着弾と同時、原子が大気中に放出される。着弾地点は各国のミサイルを備えた軍事基地を標的にする。各国から日本へ向けた報復攻撃を防ぐためだ。原子を取り込んだ人類は、1週間後、今までの脳が善良な脳へ変異する。地球上の人類を、アラビアーナ国の民を虐げない優しい人類に作り替える。そうすれば、自分が世界の人々を魔性力を使って支配する必要はなくなる。ここまで達成できれば、もう、世界は平和だ。平和になっては困る利益を追求する軍需大国がこぞって妨害してくるだろう。そんな妨害はアラビアーナ国で十分苦汁をなめてきた。その対策も練らねばならないことは承知している。そのためには反撃を許さない一斉ミサイル攻撃しかない。尚子の父・安田仁には総理大臣になってもらい、この壮大な準備をしてもらうのだ。彼と妻は仲間を皆殺しにしたという贖罪(しょくざい)を持って生きているから、櫻子の願いを聞いてくれると確信している。いざとなれば、尚子に頼めばいいことでもある。
 現在の課題は健全な細胞に変異するのに、移植後、原子が体内にくまなく浸透するのに1週間も時間が掛かることだ。それは、尚子に考えてもらう。尚子はすでに加速する方法を、実践していたことを櫻子は知らされていない。体を巡る血流を促してやればいい。
 キュートで、容姿が端麗の櫻子はどこまでも心の優しい女であり、並外れた性欲が旺盛な健康的な女性であった。彼女は、世の人類を愛情であふれさせ、たくさんの愛する仲間たちと愛を確認し合う。その方法は、それぞれが求める行為によって楽しむのだ。体、心、どんなものを媒介にしてもそして、蜃気楼(しんきろう)の国が現実味を帯びてきたことを喜んでいた。
「目的のためには、あたしの体を投げ打ってでも成就させるわ。そのために命も肉体も惜しまない。まずは、あたしがこの目標のために体をはって実験台になるわ!」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ