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蜃気楼の女

第34章 医療用再生細胞移植術カプセル

 しかし、それは学園長が考えた拘束具で櫻子を自分の元に縛り付けている。それが、戸籍法による婚姻だったのだ。さすがに学園長も自分の命があんなにも早く終わることを予想できなかった。急きょ、橋本の体を乗っ取る計画を考えた。だから、学園長は、尚子の作ったカプセルを使って、橋本の脳に移植させた。橋本は学園長に脳が支配されないか心配していたが、田所の思惑通り、支配されてしまった。学園長は、最初から橋本の思考を葬ることをプランとして考えていた。さらに、コンプレックスを抱いていた醜い鼻を持つ顔をイケメン顔に変えるプログラムも仕込んだ。
 尚子がカプセルの開発をしていたのは学校が開放されている日中だけである。学校の授業が終われば尚子は帰宅する。寮に寝泊まりする学園長は、夜になると、カプセルの秘密を隠れて分析し、研究し、プログラムの改造方法を練っていた。そして、最終段階で、己の都合のいいカプセルに改造した。尚子は田所の邪心に満ちたプランを見抜けなかった。これから、鬼畜と化した田所平八郎の野望はどうなるのか、尚子は恐怖で体の震えを止められなかった。
 櫻子へ注がれる田所の愛情は、邪心による見せ掛けの愛情であり、演技の愛情であるが、恋愛初心者のラービアにはそれが分からなかった。

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