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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

(あたしの熱愛から逃げたの、進ちゃん? あたしの愛を拒んだの? そんなこと、許さないわ! 
 許さん! 断じて、許さない!
 進ちゃん、きょう、逃亡の罪をあたしに誠心誠意、償わせるわ。あたしを置いて、4年間も、進ちゃんなしの、寂しい思いをさせた進ちゃんを、あたしは絶対、許さないわ!
 尚子、4年前のあなたと違うわ。あれから、随分、強い女に成長した。もう、あなたはプライドの塊よ。だから、今日こそ、進ちゃんにあなたの熱愛を伝えるといいわ。もう、あの頃の内気なあなたは死んだ…… 魅力がたっぷりの小悪魔なレディーに生まれ変わったのよ、なおこ、ファイトッ! なおこ、ファイトッ!)
 約4年間。尚子はきょう、計画を決行するという固い誓いを立て、生きてきた。
 1回だけ、童貞の橋本をフェラチオで昇天させ、その褒美として得られた橋本の精を、体内に取り込み、橋本の能力をも吸収した。その愛した橋本は田所の邪心に乗っ取られ、はかなくも消えたが、尚子は男との経験1回分とした。しかし、処女だった。
 処女で大いに結構、と居直った尚子は、他の男に見向きもせず、アダルト・ドールの開発に専念した。尚子が作るドールは、すべて、進一と同じ体形、1ミリと違わない。尚子は、離れてしまった進一の行動を、毎日透視能力を使って、どこにいようとも把握していた。進一に彼女と呼べる女がいないことは、確認していた。

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