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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

 進一は尚子の顔を上から、なめるように見つめた。
「ご、ごめんなさい…… 」
 尚子は頭を下げて謝った。
(そっかー 睡眠薬を使ったことにしておくかなぁー)
 頭の働かなくなった尚子は、短絡的に今の進一から嫌われるかもしれない危機を回避できればいい、と思っていた。尚子は睡眠薬で眠らせることが、犯罪行為ということが分からなくなっていた。
 この展開に喜んだのは進一だった。突如、尚子が犯罪者になったからだ。
「これから、きみの取る行動は分かってるね?」
「……」
 進一の問いかけに尚子はどう答えていいか分からないで押し黙った。その悩んでいる尚子に向かって進一は笑って言った。
「きみは僕に犯罪行為を働いたんだよ。もう、ろう屋行きだねぇー 僕の判断一つでどうにでも成るんだよ、きみは……」
 進一の興奮は最高潮に達しようとしていた。
(今日の妄想は、絶好調だぞぉー)
 進一は心の中で絶叫していた。
「ろう屋行きが嫌なら、きみも僕に、すべてを、全部を、隠さないで、見せるんだよ、いいね……」
 そう言い放った進一は、尚子をいたぶっているようで、自分の言った言葉に、自画自賛して興奮していた。
(今日の僕の妄想は、格別に、興奮するなぁー なんでかなぁー?)
 進一は尚子を頭の髪を手のひらでポンポンと軽くたたいて追い詰めるように言う。
「きみは僕に見せたいんだろ?」
 そう言ってから、腰をかがめた進一は尚子の顔を横からのぞき込んでほおを指の先でこする。尚子はすすーと触られた途端、体に電気が走り、一瞬、はねた。追い詰められる尚子は、いつもと違う展開に酔って、尚子も興奮が高まってきた。
「は、はい…… も、もちろんです。み、見てくださいますヵぁ?」
(えぇーー 尚ちゃんが見せるって言っているよ。すごい展開になってきたよー 今日の妄想はすごすぎだぁー)
 尚子の返事に対し、進一は、さらに高ぶり、語気を荒々しくさせて言った。
「じゃ…… 見せなさい…… 全部ね、隠さずに…… さあ、立ちなさい…… さあ、何を見せたかったんだ? 言ってみろ!」

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