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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

(早く返事をしないと…… 尚子の行動が読めないよぉ……)
 進一は、自分の将来を考えると、恐怖で体が震えてきた。今、絶体絶命の局面に遭遇した進一は青ざめていた。
 なかなか返事をしてもらえない進一にしびれを切らしていたが、尚子は期待どおりの返事をしてもらえるものと思っていた。進一の真っ青になった、引きつった顔を見て、尚子はうれしさでルンルン気分だった。
(さっすが進ちゃんだなぁー こんなに顔が青ざめるほど、あたしのことを真剣に考えてくれているぅーー もう、返事を待たないで、抱きしめちゃおーかなぁー )
 そうは思っても尚子は、基本、好きな大切にしている進一の嫌がることはできない女だ。
「この人形、あたしが作ったんだけど…… 進ちゃんと同じ人形を…… 分かってくれるよね? どうして、作ったのか? 分かってくれているよねぇ? 」
 進一には、そんなこと、分かるわけがなかった。進一はどう答えていいか分からなくて黙っていた。
「進ちゃんにいつもそばにいてほしいの。だから、進ちゃんを作った…… ねえぇ、引いた? 嫌だよねぇ、重いよねぇ? 」
 進一は必死に顔を左右に振った。
(やはり、尚子は僕をそばに置いておきたいんだぁー このドールみたいにされるんだぁー)
 そんな風になりたくなくて、進一は尚子の手を両手で握りしめて言った。

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