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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

 そう言って、にやりと笑った進一は、尚子の手から、なでるように肩の上に移動させ、肩の上に手を置いた。そして、ぎゅっと左右の肩を両手でつかむと、尚子の顔をなめるように見つめた。
 肩を固定されて動けない尚子は、何をされるのか分からず、期待でドキドキしてしまった。
(えぇー 変態のあたしを好きだったなんてー とっても、以外だわぁー それに、これからあたしに何するつもりなのぉ?)
 そう思った尚子は、進一がこれから繰り出す行動に期待をしてしまっていた。
(でもぉー 何? あたしって、進ちゃんに手をなでられただけで、体が感じちゃってるぅー エエエッッーー 何? 今、起こっている事って、もしかしてぇー 現実なのぉ? いつもの妄想じゃないのぉーー)
 そう心の中で叫んだ尚子は、いつも誠実で真面目な、優しい進一から出た言葉とは思えない言い方に戸惑うのと同時に、わくわくしている自分に驚いていた。気になったが、進一の口から放たれたお仕置きと言う暴力的な単語は、聞き間違いではないか、優しい進ちゃんに、確認しなければ、と尚子はもじもじしながらきいた。
「ねえ、進ちゃん、お仕置きって、何なのぉ?」
 尚子にとって、進一はいつも誠実な男でいた。だから、尚子は進一の部屋を透視しながら、自分が超能力を使って、オナニーをさせていたと思い込んでいた。
 しかし、進一に対し送った尚子の超能力は進一にはまったく通じていなくて、進一自らオナニーをしていたのである。そのことを尚子は知らなかった。
 尚子にとって、進一からお仕置きをされる、なんて展開は尚子の想定外の展開だった。これは自分の超能力を使って作った妄想の世界ではない、と思い始めた。

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