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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

 満面の笑顔で、尚子は革ヒモを持って進一に近づく。進一は恐怖で、身の毛が逆立った。進一の横に尚子が立つ。進一は目をつぶった。尚子は進一の手首を拘束しているヒモを外しながら進一の顔を見た。
(進ちゃんがあたしの思うように横たわっている。ついに、あたしの本能パワーが開花したんだわ。進ちゃんにあたしの魅力を伝えられた。進ちゃんを思いきってこの部屋に招き入れて良かった。もう、これからは、部屋から進ちゃんを透視ながらレイプなんかしない。手の届く範囲にいる進ちゃんをあたしの本能を使って、いっぱい愛するわ)
 尚子が長い間、進一とこうなることを願ってきたが、これからはもう躊躇(ちゅうちょ)なんてしない、と心に決めた。
 しかし、尚子が思っている超能力は一切、進一には通じていないのであるが、まだ、それが尚子には分かっていない。進一は現実の世界をやっと認識することができたのに、尚子はまだ超能力を使った妄想の世界にいると思っていた。

  *

 進一は尚子から手首の拘束を解かれて自由の身になった。
「進ちゃん、ついに、すべてを打ち明けるときが来たわ」
 尚子が自由になった進一の手を握ってきた。
「進ちゃん、もう、あたしの手を離さないでね。あたしたち、似たもの同士だったの」
「そうだね、ちょっと、恥ずかしいね、変態が似ていたなんて…… でも、意外でうれしいなぁ」
「進ちゃん、これからは変態同士、仲良くしようね」
「でもさ、僕、変態って、どういうのか、よく分からないんだ…… 尚ちゃんはどうなの?」
「そうよねぇ…… 進ちゃんは、基本、真面目だものね。あたしとレベルが同じじゃないと思うよ……」

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