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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

 進一の生きてきた常識が通用しない世界がある。今まで、何度となく、尚子と異世界を共有してきた記憶が、フラッシュバックのようによみがえることがあったが、尚子が進一の記憶を超能力を使って消してきた、ということらしい。
 尚子は開発を封印してきた医療用再生細胞移植術カプセルを使うときが来たことを感じた。
「進ちゃん、あたしと一緒にこの超能力を使って、世界を救うときが来たわ」
「えぇつー 意味が不明なんだけどぉー 僕はそんな大それた超能力とか言うの、絶対、持ってないから……」
「そうなの? それはおかしいわ…… その進ちゃんのそれって、他の人よりすごくないの? だって、それを見ると、あたし、もう、すごく体がほてってくるのよ…… 他の人では駄目なのよ、進ちゃんのだけよ、それって、進ちゃんの超能力じゃないの?」
 尚子は話しながらもなえることなく怒張している進一の心棒を見つめる。
「それは分からないな。僕は尚ちゃんを見ていると、こうなるだけなんだよ…… 他の人を見てもこうならないから……」
「へえーーー そうなんだぁー ねえ、それ、あたしにところに入れてくれる? あたしも進ちゃんのだけなのよ、そう思うのぉ」
 そう言う展開になって二人は抱き合った。傍らにいたナオミはにこにこ笑いながら言った。
「いいわねぇー 若い人は元気が良くてぇー あたしもこれで肩の荷が下りたわぁ。もう、あたしは退散するから仲良く心置きなく二人で励むのよー フフフゥーーー」
 ナルミはその場から後ろ歩きしながら、部屋の外へ出て行った。
「お母さんって、すごく理解のある方なんだねぇ。驚いたよ」
「うん、でも、これからするあたしたちと同じ事をお母さんにしないでね……」
「何言ってるの、もちろんだよ。僕らだってこれから結ばれるか分からないんだからね」
「じゃ、今、する?」
 尚子がそう言うと、進一は尚子を抱きしめた。
「現実の世界だよね?」
 お互いの言葉が重なった。
「今すぐ、試そうか?」
 また、二人の言葉が重なった。二人は見つめ合って、進一と尚子は、現実の世界で、初めて結ばれた。蜃気楼(しんきろう)の女と交わった男は、セックスに秀でた超能力者となる。だから、蜃気楼(しんきろう)の女は、自分を喜ばしてくれる男を大切にする理由がある。

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