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蜃気楼の女

第35章 現代の安田邸

 しかし、能力を得た男がこの超能力を使うには、肌が密着していないと使えないという限定的な超能力である。だから、尚子の父、安田仁はアラビアーナ国から日本に帰国してから、秘密の部屋でナルミと性行為をしていたが、ナルミ以外の女に超能力を使うことはなかった。この超能力の破壊的なエネルギーは、半径10メートルという範囲でしか効果がなかった。それも、エクスタシーを与えるレベルを大きくすることで昇天させる、という殺人的なパワーを持っていた。そのすさまじいパワーを安田仁とナルミは初めて交わったとき、感極まって最大レベルで愛し合ってしまった。その超能力は半径5メートル以内にいた仲間、家族を昇天させてしまった。ナルミは仲間を失い、失意のどん底にいたが、愛し合う生涯のパートナーを得た喜びもあり、複雑な心境だった。
 安田は今までにない官能を与えてくれたナルミを放って置けなかった。彼は、ナルミを日本へ連れ帰ると、自邸に秘密の部屋を作り、毎晩のように、ナルミと愛をむさぼった。
 この安田が会得した超能力は、日本の政財界を牛耳るには役に立った。本人はそのことに気付いていなかったが。握手を社交的にすることで、安田の超能力は手から相手に対し、官能を送り込むことができた。だから、大抵の財界人たちは、安田にとても好意を抱いた。安田はその能力を知らなかった。ナルミはそのことを夫には話さなかった。
 なぜなら、本来、パートナーは拉致し、監禁し、5人グループの中で共有する男として、女たちに限定的に奉仕することが、男の仕事であり、蜃気楼(しんきろう)のルールだった。強じんな体に鍛えていたアラビアーナの女たちは、男の繰り出す官能の嵐に耐えることができた。安田にその能力を使わせると、日本のか弱い女はすぐに昇天し、心臓に負荷が掛かり、数秒で腹上死してしまう。そうならないよう、ナルミは安田をうまく調教した。安田にむちを持たせ、ナルミを打つことでエクスタシーを得る変態性を獲得させた。安田はむちを打っても強靱な体を持ったナルミでなければ女を殺してしまう。だから、ナルミでなければ、エクスタシーに達せない男になっていた。

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