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蜃気楼の女

第2章 魔性の女・安田尚子

「尚子が先生の熱を吸い取って差し上げますわ」
 尚子は進一のズボンのチャックをゆっくり下ろしていった。それから両手でゆっくり楽しむように進一の局部を丁寧に引っ張り出した。
「まあ、これが熱を出している火元でしたねえーーー犯人発見しましたーーー では、おまじないの始まり、始まりーーー熱いの、熱いの、飛んでけーーー」
 尚子は進一の局部を口にくわえた。
「先生、午後2時ですよ」
 児玉は尚子の声を聴いて、我に返った。目を開けると、尚子がいた。尚子はシャーペンシルを右手で回転させながら、児玉を見ていた。
「進ちゃん、大丈夫?」
 尚子はいつもの清楚で、清純な尚子に戻っていた。もう、あの魔性の女・櫻子の姿もなかった。あの忌まわしい幻想は何だったんだろう。これが現実である。児玉は今までの一切合切が幻想だったことを理解した。なぜなら、尚子はいつもどおりの尚子だったからだ。パンティ姿の妖艶な尚子や、全裸の乱れきった尚子は、あの幻想の中の世界だけ存在する魔性の女だ。現実の尚子とは別人である。
 だが、児玉は少し寂しく感じた。悪夢のような魔性の世界のほうが、ワクワクしたかもしれない。悪夢の世界に生きたら波瀾万丈の世界にいつも張りを持って生きられた。
 でも、この穏やかで静かな世界が自分には相応しい。この世界でしか僕は生きられない。
「ごめんね。僕もさすがに毎日尚ちゃんの勉強を見てきたから疲れが出たのかもしれない。今日で終わりだからね。ちょっと、気が抜けたんだ、きっと……」

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