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蜃気楼の女

第36章 橋本浩一の記憶

 彼女はそう言って、握った彼の手に力を入れてきた。橋本は初めて会う子に、手を握られて、好きだと告白をされて、どう答えたら良いか分からないでいた。この子、変じゃない、なんて、考えが全く起きなかった。自分のほうがよっぽど変になっていた。路上で会った女子高生に欲情しているなんて、性犯罪者もいいところだ。橋本はそんな動物的、野性的な衝動を持っていたことに驚いた。ずっと女の子を見つめていたいくらい、夢中で見つめていた。
「会ってすぐに変なことを言う女だ、って思いますよね。この女はおかしいと思いましたよね。でも、安心して、頭はかなりまともなほうだと思います。フフフゥ」
 はにかんだ少女はきっぱりと言い切った。
「ここの学園長からおじさんのこと、事前に詳しく聞いています。おじさんのこと、すべてを知っています。こうしていても、あたしはおじさんの思考を知ることができます。あたし、超能力者なの…… おじさんは、あたしを女性として認めてくれてますよね? それを理解したうえで、おじさんを好きだと告白しました。こうして、おじさんの手が離れないよう強く握っているのは、欲情しているおじさんにここであたしを抱いてくれてもいい、と思っているからです。だから、おじさんも自分のことを変に思わないでください。そういうおじさんが好きなんです。あたしはこの手は絶対、離しません…… おじさんも握っていてください……」
 そう言った女の子は橋本の胸に額を押しつけてきて、腕を背中に回すと、橋本を抱きしめた。さらに、橋本の怒張した心棒の上に、彼女の下腹部の柔らかい肉を押し付けてきた。橋本の心棒が柔らかな力で圧迫された。彼女の体からいい香りがしてくる。橋本は天にも昇る心地よさを感じていた。
(どうしたっていうんだ、この子は? 何で俺なんだ?)

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