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蜃気楼の女

第36章 橋本浩一の記憶

 アラビアーナの血筋とは言え、体を鍛えていない華奢(きゃしゃ)な尚子は、なれない抽挿運動で腰を使ったため、ぐったりとして心棒でつながったまま、体の上に重なっていた。橋本も何回も尚子の中に射精して、精が尽きて脱力状態にあった。
 この尚子による性行為は、再生細胞の交換時間の短縮に大きく作用した。橋本の全身に回る血管の血流が加速され、それにより再生細胞移植術の再生細胞への作用が加速された。尚子の計画では、再生細胞移植手術の施術後、細胞が再生により全置換されるのは7日後を予測していたが、それが大幅に加速され時間が短縮された。橋本の体が熱を帯びたように心拍数が増していく。尚子が体の上に乗っているのに、心臓の激しい鼓動が全身を駆け巡り、尚子の体重を感じさせなかった。激しい鼓動と快い疲れが、橋本を深い眠りに落としていった。
「おじさん…… 寝たの?」
 尚子は橋本の衰えない心棒をそっと腰を上げて抜いた。橋本の心棒は尚子の愛液で光っていた。
「おじさん…… あたしたち、恋人になれたのね…… これから…… いっぱい しよぉ」
 尚子は橋本の心棒についた精液と愛液を自分の舌を使って奇麗になめた。橋本の寝間着の乱れを直し、掛け布団を奇麗にかけ直した。寝ている橋本に唇を重ねて、しばらく、橋本の顔を見ていた。これが橋本の最後になると、尚子は全く予想できなかった。いまだに、尚子は、田所の記憶が橋本の脳に上書きされる、と思っていた。

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